「宇和島さんさ」流派超え統一 練習会でお披露目 人間国宝・梅若さん振り付け
宇和島藩伊達家ゆかりの民謡「宇和島さんさ」の統一した振り付けが完成し、愛媛県宇和島市文京町の鶴島公民館で17日、お披露目を兼ねた練習会があった。人間国宝の観世流シテ方能楽師梅若玄祥さん(68)が考案した踊りを自ら披露。参加者は品格漂う舞に感動しながら習得に向け細かな所作を学んだ。
宇和島さんさは、江戸中期、仙台藩との伊達家の家格争いの中、両藩士が居合わせた酒席で仙台藩士が披露した伊達政宗ゆかりとされる祝い歌「さんさ時雨」に対し、宇和島藩士が即興で歌い返したとされる歌。庶民ではなく、武士階級から生まれた民謡として全国的に珍しいという。
現在市内には複数の流派があり、振り付けなどはさまざま。後世に統一した踊りを残そうと、市民らが2013年に「宇和島さんさ伝承普及会」を発足。14年には往時の音源を復元、歴史資料に基づいた衣装も作った。
同会代表幹事の木村宗慎さん(40)の縁で今春、梅若さんに振り付けを依頼した。梅若さんは「宇和島の風土を感じられる素晴らしい歌」と評価。民謡への振り付けは初挑戦ながら各流派の雰囲気を崩さず基本の型を作った。「踊りは人々が楽しむためのもの。誰でも踊れるよう、シンプルさを心掛けた」という。
波を表すような手の滑らかな動きや、武士の心意気を示す刀を抜くしぐさなど覚えやすい仕上がり。宇和島さんさを楽しむ会代表の和田てつ子さん(73)は「宇和島の魅力が表現されている。踊りを定着させ継承していきたい」と意気込む。
梅若さんは「100年、200年と受け継がれる踊りになってほしい」と期待。11月6日、今年築庭150周年を迎えた同市天赦公園の国指定名勝「天赦園」で上演する。